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読書記録を中心に日々の生活で考えたこと、思ったことを書き留めていこうと思います。

とりあえずやってみよう

小説を読むのが好き。

特に柔らかい、暖かい気持ちになれるような小説を読むのが好き。

そういう本を読むと、読んだ後言葉にしたい思いが次から次へと頭の中に思い浮かぶのだが、文章にして現す前にどこかへ消えて行ってしまい、なんだかよく分からないかっこつけたような文言だけが残る。この暖かい気持ちだとかささやかな感動だとかを書き留めたい。

とりあえずはやってみよう。青山が水墨を始めた時のように。

線は、僕を描く

線は、僕を描く

  • 作者:砥上 裕將
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/06/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

この物語を読んで1番感じたことは、生きることは美しいということ。

なんだかとても生きることの美しさを感じた。刻々と変わりゆく時の中で、一瞬一瞬にあるみずみずしく研ぎ澄まされた輝きのようなもの。何気なく生きていては通り過ぎてしまうような小さな小さな美しさ。朝露にぬれて光る草の葉だとか、やっと顔を出したチューリップの芽の青さだとか。本当に小さいけれど、どれも一瞬一瞬で過ぎ去ってしまうけれど、そこに確かにある美しさ。その美しさをこの物語に、水墨に伝えてもらった。

 

物語を読むことの良さは、その世界観に浸り、その世界を生きることができることだと思う。私はこの物語を読んでいる間、青山のすぐ側で生きていたようにも思うし、千瑛の心の中に入り込んだようにも思う。

千瑛が青山の家で返した「おかえり」の一言。両親が亡くなってから今まで「今」を生きていなかった彼が、やっと帰ってきたのだと、なんだか胸に突き刺さって、そんなふうに千瑛と戻って来られることができてよかったなあと涙が流れた。両親が亡くなるなんてことは経験したことがないので分からないけど、事実に蓋をし、見て見ぬ振りをして生きるのではなく、ありのままを受け入れ、前に進むことはきっと簡単なことではないと思う。周りに支えられ、時間をかけて、ゆっくりと動き出す彼の姿はなんだかとても強くて大きかった。

水墨というツールを通して、青山と一緒に私も、命の輝きを、生きることの美しさを教えてもらった。

 

水墨とはどういうものなのかさっぱり知らない私だけれども、生きることの美しさを忘れずに今を生きていきたい。そして命を注いだ水墨をぜひ見たい。

 

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