強く残るもの
子どもが生まれてからか、歳を取ってからか、自然に目がいくようになった。特に好きなのが今の季節。山々の木々が新緑をまとい、一気に明るくなるのが好き。なぜか、黄緑の瑞々しい葉っぱたちはいつも裏返っていて、それが面白い。また、花もたくさん咲いているのが好き。パンジーとかビオラとか定番はもちろんだけれど、ちょっと散歩に行けば、すぐに、名前も知らないけれど、色とりどりの花に出会えて楽しい。
娘が大きくなるにつれ、春の散歩では草花を摘んで歩くようになった。散歩をしていて、気づいたこともある。咲きはじめのたんぽぽは茎がほとんどないのに、今の時期になるとすっと茎が伸びる。たんぽぽは先に花が咲いて、後から茎が伸びるようだ。面白い。発見できると楽しい。
草花が好きな娘と読もうと植物図鑑を買った。
ああ、この草はこんな名前だったのかと知ることがたくさんある。寝る前に2人で読みながら楽しんでいる。
そんな生活をしている私だからか、本の中で印象に残る花というのがある。
私の大好きな作家、夏川草介さんの描く物語には花がたくさん出てくる。「神様のカルテ」では松本平野を中心に長野の自然がとても緻密に描かれていて、まるでそこにいるかのよう。もう少し子どもたちが大きくなったら、「神様のカルテ」の聖地巡りをしに長野県に行くのが夢だ。
その「神様のカルテ」シリーズで1番印象に残っているのが「夾竹桃」。一止の失恋の記憶。夾竹桃と炎の描写がなぜか頭の中にずっとあった。また、夾竹桃という花がどんなものか知らなかったのが良かったのかもしれない。気になって調べたら、あああの花かあ。と。竹みたいな葉っぱにピンクの鮮やかな可愛らしい花。でも毒がある。大好きな本に出てくる夾竹桃、夾竹桃を見ると神様のカルテを思い出すし、逆も然り。好きなものがリンクしているようで嬉しい体験である。
また、最近読んだ「流浪の月」の中で印象深かったのが白いカラーの花。ふみという男性を表す花として使われる。カラーってあの花だよなと思いながら読み終え、近所を散歩すると、古民家の軒先に白いカラーが一輪活けてあった。こんな偶然あるのだろうか。それから、「流浪の月」のどこか現実離れしたふわふわとした感じと、古民家の白いカラーがリンクしている。面白い。
本が花と私を繋ぎ、花が私と本を繋ぐ。今年の夏は何を植えようかしら。
2020/05/06
夜のアイスを食べた後で